ヤッターオタクたのしい!!

ワーーーーイ!!

北村倫理が"すべて"を守る

 

 北村倫理くんお誕生日おめでとう!!!!!!!!

 

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 倫理くんは本当に唯一無二のキャラクターだと思っております。

 格差の下側から世界を正しく斜に見る諦めと、"ヒーロー"という存在への純粋な憧れを同時に持ち合わせている人。
 北村倫理がいないと、ワヒロの独特な世界観は存在できないと思う。いてくれて本当にありがとう……

 

 以前、倫理くんについてはイベスト「名探偵北村倫理の永久」のお話をした記事でちょっとだけ書きました。

 そのときは「倫理くんはメタ認知的技能がすごく発達している」というようなお話をしたのですが、また同じお話をするのはつまらないかなと思うので、今回は倫理くんとワヒロにおける"世界"の捉え方、みたいなざっくりした内容の記事です。

 


●ワヒロは"何"を守っているか

北村 倫理
新興宗教が母体である愛教学院に所属している、
自称「弱者」で「クズ」の認可外ヒーロー。
天真爛漫で人懐っこい性格だが、発言のほとんどが真意不明の
嘘つき体質。自分を含む底辺であがく人々を救うため、
「すべての異端」を守る「普通のヒーロー」を目指している。
公式サイトキャラクター紹介より引用)

 

youtu.be

 

 スクエニ作品に明るくないことが本当に悔やまれるんですが、急に同社他作品の話をします。

 もしかして「世界観の根底を担う対の二人」というキャラクターの構成が、わりとスクエニあるあるなのかなと思ったのです。

 とはいえ私の理解があるスクエニ作品は、有名すぎてあらすじだけは知っている『ファイナルファンタジーⅦ』と、一通りやったことがある『キングダムハーツ』シリーズだけなので、今ものすごくトンチンカンな話をしているかもしれません。以下の記述はこの軽薄すぎる知識に拠っているので、スクエニ作品に詳しい方、ぜひツッコミを入れてください。よろしくお願いします。

 

 それで、私の僅かながらのスクエニ知識をかき集めてみると、主役と敵役/主役とライバルの二人というのは「そのキャラクターに世界観の概念を背負っており、かつ、対になっている」という二人なのです。何を当たり前のことを言っているんだという感じなんですが、とりあえず説明させてください。

 

 FF7クラウドセフィロスだったり、KHのソラとリク*1であったり、これらの作品の主人公と敵役は、生い立ちからして物語の主軸となる戦いの根幹に関わっています。さらにその戦いが世界を揺るがす、つまり世界観の根幹に関わっており、その戦いに勝利することで主人公は救世の英雄となります。これはRPGというゲームシステムの枠組みの中で深い世界観を演出するためにこうした設定がストーリーに練り込まれたのだと思うのですが、そのため、結果的に主役および敵役は「世界観の決定に関する重大な要素」を生い立ちとして背負わされるに至りました。

 ……何言ってるかよくわからなくなってきたので要約すると、

RPGで深い世界観を作る→戦って勝つことが世界を救うことになる
→勝利することが世界観を肯定しなければならない
→勝利する主役、および敗北する敵役が世界観の正負を象徴する
→主役/敵役が世界観のモチーフを背負う
→ストーリーの辻褄が合うために、キャラクターの生い立ちとして描かれる
→結果的に主役/敵役が世界にとって超重要人物になる
→作品の世界観を語る上でも重要なキーワードになる

と、こんな感じです。

 スクエニ作品に限らずRPG作品全般において、よく作られてきた構成と言えるかもしれません。他の例では『テイルズオブ』シリーズとかも挙げられるような気がします。

 

 で、翻ってワヒロを見てみると、このメインストーリーであるならば、従来なら"主役と敵役"は「透野光希と七見薔明」あるいは「浅桐真大と七見薔明」であるはずなのです。
 というのはつまり、概念の対立として戦いを描くならば、「ひとでないもの」「運命から外れ運命を否定するもの」七見薔明に対立する存在を主役として立てなければいけないはずなのです。だから「ひとになるもの」透野光希であったり「運命の力を使うもの」浅桐真大であったり、これらの存在が主役として立つはずなのです。

 しかしながらご存じのように、ワヒロの主人公は我らが三津木慎くんであります。七見が徹底して慎くんを"異物"として扱うのは、ストーリーとして「七見の識る運命に存在しなかったから」という理由付け以上に、こうした概念の対立と無関係な存在だからだというのがあります。三津木慎は、「七見薔明と戦う"理由"」になることができない。だから七見はずっと慎くんを異物とみなしつつ、扱いとしては非常にないがしろにするんですね。こう考えると、七見薔明のCVがFF7クラウドを演じた櫻井孝宏さんであることが俄然意義深く思えてきました。

 

 なんにしろこのような状態で、ワヒロにおいて「ラスボスとの最終決戦」は、世界観の根幹に関わる対立を演出することができませんでした。ワヒロの物語は、「"主人公"が"世界を守るヒーロー"を守る物語」であるからです。そうすると、"世界観を語る重要なキーワード"は他の対立で見せなければいけません。

 

 いつ北村倫理の話すんねんと思われているかもしれませんが大変すみません。ここからが本題です。前振り長すぎ。

 

 ワヒロの物語は「"世界を守るヒーロー"を守る物語」です。となると、ヒーローが守る"世界"について、考えざるを得ません。"世界"って何なのか。なぜ肯定され、守るべきなのか。あるいは、私たちは何を「大事にするべき世界」だとみなさければならないか。

 私がワヒロから受け取った答えは、こうです。

 

「"今あるすべて"が、"世界"である」

 

 そしてこの答えの根幹を担っている、非常に重要な概念を背負っているキャラクターこそが、北村倫理である、という、そういう話なんですな……(?)

 


●"世界"の概念、"ヒーロー"の概念

 倫理くんは常に自分を「底」の人間と自称します。恵まれない家庭に生まれ、多くの不幸を目にし、あるいは体験してきて、世の中に蔓延している絶望や悲哀、不義理、愚かしさ、そういう"良くない"と思われるものをよく知っている。そういう生い立ちを持つキャラクターです。

 その一方で、高いヒーロー能力を持ち、また純粋な"ヒーロー"という存在への憧れも持っています。そしてその憧れは、倫理くんにとっての「理想の在り方」という形に転化していきます。

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第2章36話「特別なヒーロー」より

 

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第2章35話「残り時間」より

 

 さっき上で、世界観の根幹に関わる対立、という話をしました。その話になぞらえるならば、代表校として選ばれたヒーローたち全員に対立する存在が北村倫理である、という形になります。

 ですが倫理くんにおいては、対立する、という語はあまり適切でない。
 倫理くんは概念としてヒーローたちと対立するというよりは、補集合なのです。

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ヒーローたちは各々、守るべきものを明確に持っています。ということは、「守るべきものでないもの」が存在するということです。

 良くないと判断されたもの。正義にそぐわず、倫理にもとると判断されたもの。あるいは、より大事なものを守る過程で、見過ごされ救い漏らされたもの。そうしたものを、北村倫理は守ろうとする。そのために、時には「ヒーローが守るもの」と戦いさえする。

 北村倫理が存在することで、「守るべきものでないもの」は存在しなくなる。今あるすべてが「ヒーローの守るべき存在」になります。

 だから、ワヒロにおける"世界"とは"今あるすべて"なのです。そしてヒーローたちは、今あるすべてである"世界"を守るために戦うのです。

 

 そして倫理くんはこの自分自身が持たされている概念、世界観の一端であることに対して、自覚的な振る舞いをします。ちょっとメタ的でややこしいのですが、作品内世界において、「"世界"について、あるいは"ヒーローが守るべきもの"について考え評している」ことに自覚的なのです。この点において、倫理くんは他のキャラクターよりも一段階上の自認を持っていると言っていいと思います。

 そして同じ立場、同じ自認の持ち方をしているキャラクターに、唯一、浅桐真大がいます。

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第2章37話「5つめの学校」より

 作品内でたびたび倫理くんと浅桐さんの類似が語られるのは、この自認の持ち方に基づいているのだと思います。
 すごく極端なことを言うと、日常生活に紐づき、地に足がついた現代生活をしているワヒロ世界において、倫理くんと浅桐さんだけがFF7のラスボス戦前の規模感で毎日生活しているのです。要所要所で二人の発言だけ急にフワッとする(笑)そういう印象があるのはこれが原因だと思います。

 この"世界"あるいは守るべきものに対する規模感というのは、彼らの"ヒーロー"に対する憧れが転化し、そして真摯に向き合った結果の自認の表れです。あまりにも切実で、美しいことだと思います。

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第2章37話「5つめの学校」より

 

 ワヒロのメインストーリーは、1章で「ヒーローに出会い、ヒーローになるまで」を描き、3章から「世界を守る戦い」を描いています。

 そして2章では「ヒーローが守る世界」を描いているのです。

 その2章で、倫理くんはヒーローたちの敵となり戦い、ワヒロの世界観、守るべき"世界"が何なのかを見せている。世界観の根幹を担う重要なキャラクター、とはそういう意味です。

 ヒーローたちの補集合であるキャラクター、「今あるすべてが世界である」の「すべて」を形づくるキャラクターである北村倫理が、世界の敵と戦い、主人公三津木慎の戦いを守る。ロマンチックで、ドラマチックで、そして切実で痛々しいリアルを伴うキャラクターだと思います。

 


●おわり

 というわけで、北村倫理と世界観というお話でした。規模感がデカい。

 規模がデカいと記事にまとめるのに苦労しまして、というかあんまりまとめきれずとっちらかってて申し訳ないです……「作品の世界観について」という感じでまた改めてかけたら良いなと思っております。

 本当に倫理くんがいなかったらワヒロの複雑な世界観は描けていないし、倫理くんがいなかったらこんなにワヒロのこと一生懸命考える感じにならないと思います。
 そして私は「名探偵北村倫理の永久」イベ好きすぎる芸人なのですが、このイベントが衝撃的すぎてブログ記事の2回目をしたため、それが今に至るまでブログで好き勝手書き続ける行為に繋がっているので、なんというか感慨深いというか、とにかく私の中でかなり重要人物なのです。

 いつも本当にありがとう……存在してくれてありがとう……そしてハッピーバースデー!!!!!回らない寿司一緒に食べような!!

 

 

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*1:KHのリクは立場がシリーズで変わるキャラクターなのですが、「シリーズ知識を前提とした1作目の対立構造の話」だと思ってください。