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ワーーーーイ!!

透野光希と物語の結論

 透野光希くんお誕生日おめでとうございます!!!!!!!

 

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 8月31日、夏の最後の日生まれってなんだかとっても光希くんっぽい。
 晩夏のキラキラが良く似合う、優しくて素直で、でも陰りを内包している光希くんは、ワールドエンドヒーローズの"もう一人の主人公"でもあるでしょう。

 

 今年はこれまでキャラクターのそれぞれについてブログ記事を書いてきたんだけど、光希くんの記事では何を書こうか、マジで柊くん書いてたあたりからずっと考えてて……
 というのも、光希くんに関しては書けることがありすぎるんですね……
 全部書いてるととっ散らかっちゃうし、そもそも題材は山のようにあるんですけど解決してなかったり、私がよくわかってなかったりで、どういうことを書くかほんとに悩んだのですが。
 まあでも答えがあるものでもないし、ハナから好き勝手書いてるブログなので、今回も気にせず好き勝手書いていこうかなと思います。それを思考の放棄と言う。
 そういうわけで今回は、光希くんのキャラクターとしてのあり方という、非常にざっくりふんわりした記事です。

 


●「問い」と「答え」

透野 光希
穏やかで純朴な、記憶喪失の不思議な少年
過去の記憶はないものの物覚えは抜群に良く、
一度見聞きした物事は、ほぼ完璧に覚えることができる天才。
普段はぼんやりしているが、興味対象への好奇心は旺盛。
やや天然で、気がつくとひとりで鳥などを追いかけている。
公式サイトキャラクター紹介より引用)

 

youtu.be

 

 さてじゃあなにからお話しようかなという感じなんですが、光希くんと言えばやっぱり、本編の初登場シーンではないでしょうか。白星第一学園にて、三津木慎くんと出会うシーンですね。

 

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1章第2話「不思議な少年」より

 お話の主人公である慎くんとの出会いは、すなわち読者(私たち)との出会いでもあります。"ヒーロー"を主題とする物語『ワールドエンドヒーローズ』の中にあって、実は透野光希くんは、読者が最初に出会うヒーローなんですよね。
 そんな「"ヒーロー"透野光希」との出会いを経て、慎くんはヒーローになることを選びます。慎くんがヒーローになるきっかけ、ターニングポイントが光希くんとの出会いというわけなんですよね。

 こうしてまずは先輩のヒーロー、慎くんをヒーローの道へ導く存在として現れる光希くんなのですが、物語中で、その立ち位置がどんどん変化していきます。この変化が透野光希というキャラクターの一番面白いところだと思うんです。他のメインキャラクターは、性格としてのギャップやそれぞれが内包する困難はありますが、物語における役割が変化することはほぼありません。でも光希くんは、「光希くんを主役とする物語」の進行が、「慎くんを主役とするワヒロ本編」に大きく影響を与えるんですよね。だからやっぱり、光希くんは第二の主人公であると言えると思います。

 

 じゃあ「光希くんを主役とする物語」が進行するのはどこか、という話なんですけど、
 

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2章第2話「フレンドリーな学校」より

 まず2章に入ってすぐ、光希くんと慎くんの会話が挿入され、光希くん側からの歩み寄りがあります。ヒーローになるきっかけになってくれてありがとうと言う慎くんに対して、光希くんが「どうして戦うのか」という問いかけを提示する。その問いに対して答えを持たない慎くんに、光希くんは「僕もわからない」と言う。こうして、光希くんが慎くんを"導く"存在なのではなく、"共に歩む"肩を並べる存在だよということが明示されます。

 これタイミング完璧ですよね。なぜなら、2章の冒頭は、崖縁高校が北区の認可を受け、ここから現れる各地区の認可校のひとつとして活動を始めていく、そのタイミングなのです。1章の大きな課題、「認可を得る」ことを達成して、ストーリーが加速するタイミングで、光希くんと慎くんの関係性が変化します。それと同時に導く者と導かれる者から、共に歩む者になるという形で、ストーリーの展開が二人の関係性に示唆されています。

 こうして並び立って行く光希くんと慎くんなのですが、最初に光希くんが提示した「どうして戦うのか」という問いかけは、実は慎くんの方は2章内で早々に解決してしまいます。

 

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2章第36話「特別なヒーロー」より

 この35話、36話は"北村倫理というヒーローとの出会い"もあり、非常にボリュームが大きくて理解が追いつかない部分もあるのですが……とにかくここで慎くんは答えを得ており、光希くんの方だけが「戦う理由の答えを探す」というフェーズに置かれ続けることになります。

 

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3章第43話「自分の記憶」より

 3章で改めてまた二人の会話が挿入されます。友情に涙する指揮官(急に出てくる自我)
 どうして戦うのかという答えを持っていない、持てない理由が「自分の過去がないから」であると考える光希くん。それに対して、僕も何もなかったようなものだから、これから作っていくんだと返す慎くん。エモがとどまるところを知らない。

 でも実はこれ、並列じゃないことにお気づきでしょうか。

 慎くんが「これから記憶を作っていく」とプラスの動き、前進しているのに対して、光希くんは「記憶を取り戻す」マイナスからゼロに戻す作業。光希くんだけ、現地点から動けないでいるのです。

 ストーリーにおいて、主人公の慎くんと「共に歩んでいく」という、キャラクターの関係性は変わっていませんが、2章から3章にかけて、光希くんのストーリー上の役割が明確に変化していることがわかります。ここで慎くんが先に一歩進むことで、光希くんは"慎くんとは違うテーマを担うキャラクター"という役割を持ったのですね。

 

 そして、なぜ光希くんは戦う理由を持つことができないのか、その理由は彼の出生に置かれています。ちゃんと全部に理由があって構成されてる、ほんとに緻密な物語だよ……

 

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4章第91話「過去の真実」より


 ここで光希くんは「人造人間の器体」であることが明かされます。ここの七見とヒメさん、めちゃくちゃ悪役ですごい。

 

 ところで、このブログではたびたび、物語の類型を持ち出しているのですが、昔話や古典的英雄譚の類型のひとつに、「異常誕生譚」というのがあります。不思議な出生、人ならざる出生をもつキャラクターが主人公として英雄となるストーリー群です。古今東西様々な文化でこの類型を見ることができ、神話であればミノタウロスなど、日本の昔話なら桃太郎やかぐや姫が有名ですね。

 光希くんの出生も、この類型に当てはめることができるといえばできるのではないでしょうか。私はキャラクターそれぞれに、英雄的なモチーフを設定として持たされていると思っているのですが、光希くんのモチーフになり得るものといったらこれ「異常誕生譚」かなあと思っています。

 

 少し話が逸れましたが、こうして光希くんの出生が本編で明らかになると、また光希くんの役割が変化します。「なぜ戦うのか」この問いの答えを持たない=そもそも問いが成立しないという現実を突きつけられ、絶望した光希くんは、今度は"敵"として慎くんと相対することになります。光希くんのテーマ「なぜ戦うのか」は「なぜ(ヒーローとして世界を守るために)戦うのか」という意味ですから、この問いの答えを持たないということがすなわち、「ヒーローとして世界を守るためには戦わない」=「ヒーローではないものとして戦う」=敵という事象に結びついてくるわけですね。

 敵となった光希くんに対して、慎くんは逡巡するものの、きちんと相対し戦うことを選択します。この逡巡と選択、思考の過程は5章第100話「自分の正しさ」において、非常に丁寧に描かれています。今回は光希くんの記事なのでここを詳しく取沙汰はしませんが、これまで出てきた「きっかけ」「問い」「答え」をしっかりとすくいあげておりものすごいです。しかもこの次の101話で描写される佐海・北村、指揮官や神ヶ原さんの様子が、キャラクターのいる意味を明確に描き出しており……この光希くんVS慎くんの戦い周辺の一連の流れは、やはり物語のテーマの肝でもあるためか、描写の意味付けがことごとくものすごいんですね、構成力の高さ……ひしひしと感じる……
 

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5章103話「残り3時間」より

 「なぜ戦うのかという問いを持つことができない」光希くんの出した「答え」。「ヒーローはいない」。
 光希くんのキャラクターを考える上で悩ましいのが、「773-Bの自我is何」という問題なのですが……いやマジで773-Bの自我is何……どうして現れた……
 ただ、この「ヒーローはいない」というひとつの答えを提示する(慎くんがその答えを打ち破るために)、その提示のために773-Bという存在の自我が必要だったのかなあと思います。ここはまだ要検討……

 

 この「ヒーローはいない」という「答え」を明確に否定する慎くん。

 

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 ここで光希くんが物語の冒頭、慎くんの「きっかけ」であったことが活きてくる。
 このシーンかなり重要なんですが、このお話が更新された直後にもツイッターでしゃべったことがあって、

 

 
 ……ていうことなんよ。過去のツイートで記事書くのをサボるな

 

 過去の記事にも何度か出てきていますが、ワヒロのストーリーでは"ヒーロー"という概念をかなりメタ的に認知しており、「キャラクターがヒーロー(英雄)である」ということ自体が物語を推進する装置になっています。そうした物語にあって、光希くんは「もともと自分のものではなかった自我の喪失」というストーリーを持ち、その自分のストーリーを根拠に「ヒーローはいない」と言う。これはつまり、「物語の役割があるだけだ」という意味です。作中主観で言うと「社会における役割があるだけ」とも言えるかな?

 ここまで光希くんの役割はこうだ、その役割がこう変わる、というふうに記事を書いてきて、ここで光希くんに私は逆襲されているわけですね……結局役割なんだと……身につまされる……

 

 しかしそこで、主人公・慎くんが否定してくれます。君はヒーローである。そして、僕もまた君のヒーローである。これは、承認であるとともに自認です。

 メタ的認知があることで"ヒーロー"は役割として運用されてきた。物語を推進してきた。だけど、本来の"自認"の役割はそうではないはずです。自分を認めて、自分を理解することは、まさに自らのために行われるべきことです。慎くんがここで行っているのは、そうした本来の意味の、純粋な意味の自認として「自らをヒーローであると認める」こと。そしてそれが、「きみ(光希くん)の戦う理由の答えになるはずだ」ということです。ヒーローである自認がすなわち、戦う理由に転ずる。そしてさらに、これを信じることが、すなわち光希くんを救うことになる。なぜなら、光希くんは「なぜ戦うのかという問いに答えを持てないことに苦しんだ」人だからです。

 

 『ワールドエンドヒーローズ』は、「どう戦うか」を問う物語だ、と以前の記事でも書いたことがあります。「どう戦うか」という物語なのです。「なぜ戦うのか」ではないのです。なぜなら、ヒーローの自認がすなわち、すでに戦う理由だから。他に理由はいらないのです。この結論の出し方が本当にすごい。すべての正義を、すべての戦いを、すべての願いを内包している。多様な思想が入り乱れ、それを肯定すべきという多様性の現代にあって、『ワールドエンドヒーローズ』はあらゆる戦いを許容している。そのうえで、ではどう戦いますか?と、そう問いかける物語なのです。

 

 こうして「役割じゃないんだ」という結論が出たところでこれを申し上げるのは大変恐縮なのですが、ここでもまた光希くんの立場はスライドしており、敵から救うべき対象、そして"救われたもの"に変化しています。でもこれがすごく重要で、慎くんと光希くんの関係は"お互いに救う""お互いにヒーローだと認め合う"というものになる。だって、「君はヒーロー」であり「僕はヒーロー」である、これがストーリーの結論だから。確かな自認を持つとともに、その自認を認めてくれるだれかがいること、これが重要なのだということです。

 この結論は、光希くんの役割が刻々と変化していったこと、それによってストーリーが動かされてきたこと、その積み重ねがなければ活きてこないのではと思います。本編で慎くんが決意し選択する信念は、光希くんの存在に大きく左右されている。

 光希くんの存在が大きいことは言うまでもないかもしれませんが、こうして順に追いかけてみると、非常に綿密に構成されている、密度の高い物語であることがわかるのです。


●おわり

 なんかオチが見当たらなくなってきたので強制的に〆ます
 光希くんはその特性上、語ろうとするとどうしても本編をなぞっていく感じになってしまうので、あらすじみたいになってしまいすみません。本当は773-Bの自我is何の話もっとしたかった(わからない)
 これを踏まえてイベントストーリーを読むともう…ほんとうに……えらいことなんだ…(?)イベストの話もしたいですね……無限に語れるな……サービス終了しても遊びつくしますとサービス終了するとき言ったのですが本当に遊びつくしています、ありがたいことです。
 とにもかくにも光希くん、ハッピーバースデー!!!!きみの誕生日のお祝いができて私は嬉しい!!みんなにも思いきり優しくされてくれ!!!

 

 

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