ヤッターオタクたのしい!!

ワーーーーイ!!

戸上宗一郎は戦うしかない

 戸上宗一郎さんお誕生日おめでとうございます!!!!!!!

 

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 忘れもしない戸上さんとの出会いは復刻崖縁クリスマスのイベントであります。おかげさまで戸上さんのイメージはしばらくの間「王様ゲームの人」でした。
 そのせいでなのかどうかわかりませんが、戸上さんの天然が度を越してトンチキなところに着地する感じがとても好きです。新年初笑わぬ訓練のイベントとかとても好き。メインストでも率先して立ち絵が天地逆転していってるの好き。

 

 そんなトンチキ可愛いところがある戸上さんですが、普段は物事に動じない、頼れる崖縁の大黒柱です。リーダーとして、重式武器の前衛として戦いの要になるだけでなく、地元の人たちからも大層慕われている、愛されるヒーロー。
 その一方で、戸上さんに与えられた命運は波乱に満ちた過酷なものでもあります。

 

 今回の記事は、そんな戸上さんの過酷な道行きが、戸上さんのヒーローとしての性質そのものなのではないかというお話です。

 


●戦うしかない

戸上 宗一郎
生真面目で実直な、崖縁のリーダー。
信じたものにまっすぐで、一度決めたことは曲げず、信念を貫く。
かつては志藤や伊勢崎と共に白星付属中学に通っていたが、
本人の意思により内部進学をやめ、崖縁に入学することとなった。
マイペースで、親しい友人には変わり者だと思われている。
公式サイトキャラクター紹介より引用)


youtu.be


 例によってメインストーリー内では各々のキャラクターについて詳細を語られることはないので、戸上さんの来歴について丁寧に描写されるのは、彼のサイドストーリーが初出であろうと思われます。またイベントストーリー『雨と煙と傷のあと』内で、詳細と戸上さん本人の心情が明かされています。
 曰く、叔父が崖縁の理事を務めていたが、不祥事で退任し、両親からは白星への進学を求められたこと。星乃慧吾が死に至った事故を切っ掛けに、崖縁への進学を考えたこと。そのために、星乃慧吾の死に関わっているのではないかという根も葉もない噂に付きまとわれているということ……
 そして、それらに対して「これからの自分の行動で、判断してもらうしかない」と考えているということ。

 

 列挙すると如実なのですが、戸上さんの身に降りかかっている大きな出来事というのは、100%、個人の力ではどうすることもできないことなのです。一切、戸上さんに非がないことなのに、その発生を止めることは戸上さんにはできないし、発生してしまったあとに戸上さんが個人で対処することも不可能なのです。そうして対処不可能な理不尽に見舞われ続ける戸上さんが出した結論が、「生き様を見せるしかない」という、痛切なひとつの真実なんですね。
 以前にも記事でお話したことがありますが、ワヒロのストーリーというのは、“どう戦うか”が即ち“どう生きるか”という話だと思っているんですよね。そしてこれは因果が逆転することもできると思っていて、“どう生きるか”が“どう戦うか”という表現に置き換えられてしまうこともあるのです。戸上さんの場合、「生き様を見せるしかない」というシンプルで切ない結論は、「戦うしかない」という事象に収束していきます。

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 これは戸上さんのサイドストーリーの冒頭ポエムです。正直、戸上さんの英雄性というのは、これが割とすべてなのです。「ただひたすら、どこかへ進む」。それしかできないから、そうせざるを得ない。それしかできないのは、戸上さんの能力や人格の問題ではなく、戸上さんの力の及ばない大きな事象という理不尽によって、“それしかできない、にならざるを得ない”だったからなのです。常に背水の陣、常在戦場。戦うしかないから、戦っている。戸上宗一郎というのは、そういうキャラクターです。
 また戸上さんは、そういう自分、そうならざるを得なかった自分というのを明確に自覚しています。

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『雨と煙と傷のあと』の一場面


 崖っぷちで戦うのが自分という人間だ、と自認しており、実際に他のキャラ、浅桐さんや頼城さんからセリフとして言われる場面もあります。キャラクター紹介で言われている、「信念を貫く」というのは、このことなんだろうなと私は読解しているのです。崖っぷちこそ我が戦場、戦うしかない生き様が天命、そこで戦い抜き守り抜くという覚悟。そうした覚悟が、戸上さんの「信念」なのだと思う。なんという切実な覚悟なんだ……

 


●英雄は乱世を呼ぶ

 Q.困難を乗り越えて平和を勝ち取った後、ヒーローはどうなるのか?
 A.ヒーローではなくなる

 

 ……というわけで、ヒーローという概念は「戦っていなければヒーローではない」という業のようなジレンマを内包しています。平和(=困難の解決)を目指して戦うのに、平和が達成されてしまうとヒーローはヒーローではいられないのです。物語構築上、ヒーローは乱世を呼びます。もしかしたら現実にもそうかもしれません。
 ワヒロのキャラクターが各々に「ヒーローという価値観」をモチーフとしているなら、戸上さんのモチーフはおそらくこれだと思います。戸上さんの覚悟、戦って守り抜くという覚悟は、決して「平和のための道程」ではないからです。
 崖縁の裏切り者、という戸上家系へのレッテルは白津紀家の陰謀によるものと示唆され、また星乃慧吾に関する噂の発生も、白星学生による自己完結のルサンチマンであるように語られています。戸上さんの戦いは、これらの“理不尽の根源”へ対抗するものではありません。それこそ戸上さんの生き様によって、軟化することはあっても、この理不尽を絶対的に根絶し、平和を勝ち取るということは、どうにもできそうにありません。また戸上さんはその平和を手にすることを目標に戦っているわけではなく、あくまでも“今の環境の中で、いかに守るべきものを守れるか”という土俵で戦っているのですね。
 なんなら、戸上さんの活躍によって現状が改善されたとして、戸上さんにはまた新たな理不尽が降りかかり、新たな戦いを強いられそう。そうした印象を受けるのはやはり戸上さんが「解決のために戦っているのではないから」です。

 

 どうあっても、戦いの渦中に身を置いてしまう。理不尽を呼んでしまう。崖っぷちにおいて、戦い続けることを選んでしまう。そうした性質こそは、「ヒーロー」という概念になくてはならないもの、本質中の本質と考えます。実際、メインストーリーでも、戸上さんは最後まで戦場にいます。王道である白星第一を蹴って“己の戦場”崖縁に自ら赴いてきた戸上さんのモチーフは、このようなヒーロー概念における王道、戦いの中に身を置くという本質を指しているのだろうなと思うのです。

 


●「ヒーロー」に「生まれ直す」

 白星の候補生だったころ、戸上宗一郎はそうではありませんでした。戸上さんは強い覚悟をもって白星付属中学に進学したわけではなかったし、ヒーローとしての戦場を求めたわけではありませんでした。
 今の戸上さんになったのは、やはり星乃慧吾くんの一件が大きい。親しい友人を失ったことで、戸上さんの価値観は大きく変わります。

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[生き直す覚悟]カードストーリー「鋼の心臓」より


 そして、以前慧吾くんから言われていたことを改めて考え直し、崖縁への進学を決めるのです。

 

 恒常SSRのカードタイトル[生き直す覚悟]。これは崖縁に行ったから、心臓を改造したから「生き直す」なのではないと思う。というか、因果関係が逆で、「生き直す」から崖縁に行き、「生き直す」から心臓を強化するのです。「生き直す」ことの具体化として進学や心臓の強化という事象が使われているのだと思います。
 では戸上宗一郎の「生き直す」とは何なのか。それは、「ヒーローになる」ということ。……だと、私は捉えています。
 役職名としてのヒーローではなく、概念としてのヒーローです。つまり、先に言った戦う覚悟を決めたということですね。白星中時代の戸上さんも、自らが理不尽な運命にあるというのは感慨こそなけれど、客観的に把握はしていたと思うのです。でも、ここで、皮肉にも友人の死という最大の理不尽を切っ掛けに、戸上さんは腹をくくったのだと思います。自分の人生は理不尽だということを受け入れた。この理不尽な人生を戦っていくのだということを心決めした。その決心がすなわち、崖っぷちこそ我が戦場、ということであり、「ヒーローになる」ということと同義なのです。
 この決心の原動力はひとえに「守るべきものを守りたい」という、戸上さんの純粋な欲求にあります。この戸上さんの人格の美しさが覚悟を呼び、戦場に身を置かせている。戦うしかない人にさせている。戸上さんがヒーローであるということを思うとき、いつもこの、戦場に身を据え置いているという痛々しさ、覚悟の重さ、その人格の美しさを痛烈に感じます。まさに生き様を見せられているなあと思うのです。

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サイドストーリーより

 



●おわり

 戸上さん、しんどい、本当に、私は戸上さん大好きなんですが、考えるたびに、戸上さんは全人生をもってこちらにぶつかってくるので、ウッ…重たい……まだこちら側に受け止めきれるだけの人生キャパシティが不足している……となります、なりたい、戸上宗一郎を完全に受容できるだけの豊かな人生を内包した人間に……(重たい)
 とにもかくにも戸上さんハッピーバースデー!!!!世界中から祝福されてください!!!!!全人類戸上宗一郎の生誕を祝ってくれ!!!!楽しい一日になっていますように!

 

 

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